静岡大学サスティナビリティセンター

産業と技術革新の基盤を作ろう 気候変動に具体的な対策を 海の豊かさを守ろう
2023.06.13

海洋微細藻類・微生物の共生による水産資源の持続性構築とバイオ資源の高度化

プロジェクトリーダー:鈴木 款(静岡大学/創造科学技術大学院/特任教授)

プロジェクトの概要

 大きな打撃を受けている駿河湾の水産資源、特にサクラエビやシラス、さらには磯焼けの影響によるウニやアワビ等の減少、これらの資源を回復し、持続化していく鍵は、水質環境の改善とプランクトンの増殖にあります。プランクトン、微細藻類の増殖は、食物連鎖による魚介類の資源量の増加や微生物の増殖による機能性物質の生産を促進します。微細藻類には多くの種があります。駿河湾の主な微細藻類は珪藻、円石藻、渦鞭毛藻、藍藻です。このうちサクラエビ等の魚介類の餌として重要なのは珪藻です。珪藻の増殖にはケイ素が必要です。微細藻類の増殖に必須な栄養塩、ケイ素は駿河湾の水深100m以深の深層水に硝酸塩、リン酸塩や微量金属の鉄、亜鉛等共に豊富にあります。この深層水と自然光を利用すれば微細藻類の増殖を自然にやさしいエコ・脱炭素技術により行うことができます。駿河湾では20mの表層水と270mの深層水を2000トン/日汲み上げています。深層水は水温が低く、栄養塩に富み、汚染物質が極めて少ない清浄な海水です。駿河湾深層水は植物プランクトンの種が存在しています。汲み上げた深層水に20℃前後の水温と自然光で3日後には珪藻が1000倍ほど増殖します。植物プランクトンの増殖と同時に動物プランクトンと微生物も増殖します。微生物はビタミンB12、アミノ酸、珪藻はDHA、EPA、グリセーロール等の様々な機能性物質を生成します。硝酸塩とケイ酸塩の濃度比を変えて、珪藻の異なる種や異なるサイズを生産する技術を開発しました。餌生産の技術と機能性物質の高度化利用の技術の推進による駿河湾の水産資源の持続的なシステムの構築と海洋バイオ産業の創成を目指します。